「一度、仕事を休んで、立ち止まりたい」
そう思っても、
私の預金残高は、それを許してくれませんでした。
当時の収入は、同世代の中では比較的高い水準。
独り身で、教育資金など大きなお金のかかりどころもありません。
普通に考えれば、
ある程度の貯蓄があってもおかしくない状況でした。
……が、しかし。
当時の私の預金通帳にあったのは、
わずか180万円ほど。
なぜ、こんなことになってしまったのか。
ここから、これまでのお金の使い方を振り返ってみたいと思います。
29才まで、実家暮らし
私は29才になるまで、ずっと実家暮らしでした。
東京近郊に住んでいたため、大学も就職先も実家から通える範囲。
親からも「女子の一人暮らしは危ないし、お金も貯まらないから」
と言われ、特に疑問を持つこともなく、家を出るきっかけもありませんでした。
高校時代はバイト禁止でお小遣い制。
大学時代も大きなお金を使うことはなく、
「卒業後は40年働くんだから……」と、
ほとんどアルバイトもせず、モラトリアムを満喫していました。
大学卒業後、初めての就職先の初任給は、
手取りで18万円ほど。
実家に毎月3万円を入れてはいましたが、
それ以外はすべて自分のお小遣い、という感覚。
これまでギリギリの収入で生活してきたため、
貯金という習慣もなく、
「こんなに毎月お金が入ってくるんだ……」と
戸惑っていたことを、今でも覚えています。
社会人デビューと、散財の始まり
大学時代は倹約していた私ですが、
社会人になり、
- 毎月15万円ほどの自由に使えるお金
- ボーナス時には+40万円
という状況になり、
徐々にお金の使い方が派手になっていきました。
洋服はプチプラからデパートブランドへ。
コスメも、気づけばデパコスばかり。
同期の女性たちも、会社の寮や実家暮らしが多く、
今で言う「ヌン活」やラグジュアリーホテルの女子旅など、
今までしたことのない贅沢を楽しんでいました。
私の様子を見て、
両親は「そんな無駄遣いして……」と少し引き気味でしたが、
特に強く止められることもありませんでした。
お金に苦労してきた両親だからこそ、
「今まで我慢してきた分、好きにさせてあげたい」
という気持ちも、あったのかもしれません。
転職で年収UP、そして散財は加速する
社会人になり、「稼ぐ」という感覚を覚えた私は、
仕事にも、より意欲的に取り組むようになりました。
1社目は、両親の勧めで
「男女問わず、長く働ける安定した仕事を」と
公的機関に就職。
人も穏やかで、定時で帰れる平和な職場でしたが、
当時の私には、少し物足りなく感じていました。
大学の同期が民間企業で活躍する姿を見て、
「自分も、もっと成長したい」と思うようになり、
女性向けのビジネスセミナーなどに積極的に参加。
その流れで、就職から2年後、
まさかの外資系企業へ転職しました。
転職先は、中途採用者ばかりで、
20代前半は私ひとり。
スキル面でも未熟さを痛感し、
「このままではまずい」という危機感から、
がむしゃらに働き続けました。
その結果、入社から1年半ほどでマネージャーに登用され、
年収も毎年上がっていきました。
当初は猛反対していた両親も、
次第に応援してくれるようになり、
なぜか「自分で人生を切り開いている」という
根拠のない自信までついていました。
「頑張っているからいいよね」という言い訳
一方で、これまで経験したことのないストレスにも
さらされるようになりました。
当時の会社は、日本進出して間もない時期で、
新しいサービスやプロジェクトが次々と立ち上がる状況。
- 平日は22時に帰れたら早い
- 常に走りながらのプロジェクト進行
- 人の入れ替わりも激しく、業務はカオス
プライベートを楽しむ余裕はなくなり、
心身ともに、かなり消耗していたと思います。
そんな中で、
「自分はこれだけ頑張っているんだから」という気持ちが、
お金の使い方にも表れていきました。
整体、マッサージ、温泉施設。
洋服やコスメも、さらに拍車がかかっていきました。
どこかにあった「いつか結婚する」という甘え
結局、今も独身ですが、
20代の頃は付き合っている人もいました。
どこかで、
- 結婚して
- 子どもを持って
- 時短勤務で働いて
そんな未来を、漠然と思い描いていました。
だからこそ、
「思い切り働けるのは今だけ」
という気持ちもあったのだと思います。
また、将来は一人で生活するわけではない、
という甘えも、確かにありました。
しかし、その彼とも、
28才頃に別れることになります。
ようやく始めた、一人暮らし
結婚も遠のき、
いよいよ実家を出ることを考え始めました。
自分のお金の使い方がまずい、
という自覚もあり、
「一人暮らしをしないと経済感覚が身につかない」
という耳の痛い指摘を受けることもありました。
業務量が少し落ち着いた職場に転職し、
1年ほど経った頃、ようやく一人暮らしをスタート。
当然、家賃や光熱費、生活費はすべて自己負担。
以前のような使い方はできなくなりました。
支出はかなり抑えるようになりましたが、
「貯金ができているか?」と聞かれると、
正直、そうでもありませんでした。
相変わらず、
入った分だけ使う生活は続いていました。
将来のための貯金は、年金と持株会だけ
老後資金も考えなければ、と思い、
貯蓄や投資にも一応チャレンジはしました。
しかし、
- 「仕事は好きだし、生涯現役で働くだろう」という油断
- 投資への知識不足
この2つが重なり、
どうにもうまく取り組めませんでした。
企業型年金だけは、細々と継続。
転職して自己負担になってからも、
「とりあえず……」という気持ちで続けていました。
ただし、これは60才まで引き出せません。
また、
「掛け金の10%を会社が負担」という言葉に惹かれて、
持株会に入ったこともありました。
数年積み立てましたが、金額は微々たるもの。
しかも、結果はマイナスでした。
結局、「働ける自分」を過信していた
その後も何度か転職し、
ありがたいことに年収は上がっていきました。
人生100年時代、
70才まで働くのが当たり前――
元気に働く先輩たちを見て、
「自分も、きっと大丈夫」
と、無意識に思っていました。
けれど、40才手前になり、
体力の衰えを実感する中で、それが幻想だったことに気づきます。
体力に合った働き方を考えてこなかったこと。
万が一、働けなくなったときに
自分を守る備えがなかったこと。
仕事を辞めたい、と思ったときに見た預金額が、
その現実を、突きつけてきました。
(続く)
